少女少年SS(みずきルート)一部ダイジェスト

 
 仕事も終わり、控え室でみずきとあおいが着替えている。
 みずきがウィッグをはずして、美少女アイドル白川みずきから普通の男の子である水城晶に変わろうとしている。
 あおいも女の子用アイドルの衣装から、男の子用の洋服に着替えて普通の男の子に変わる。
 そんな中、みずきがあおいに話しかける。
みずき「あおい、今日もお疲れ」
あおい「みずき……じゃなくて晶もお疲れ様」
みずき「あおいって、慣れるの早いな。今日の収録もスラスラ出ていたし、その内ソロでドラマの仕事とかも来るんじゃないのか?」
あおい「そんな……ボクなんて……まだ緊張して全然だし。ドラマなんて出たとしてもやる自信なんて……」
みずき「あはは、謙遜するなって。オレだって初めてドラマに出たときは滅茶苦茶だったんだから」
あおい「へぇ……晶が……」
 
 突然、みずきが思い出したように言う。
 
みずき「そうだ。あおい。明日暇か?」
あおい「え?」
みずき「明日暇だったらオレに付き合わない? オレの握手会があるからあおいも一緒にどうだ?」
あおい「えー!? でも、みずきの握手会でしょ? 僕なんかが一緒に出ても……」
みずき「大丈夫だって。一人増えてもファンは喜ぶだけだって」
あおい「そうかなぁ」
みずき「それにあおいはまだ握手会やったことないだろ? それくらい経験しておいて損はないぞ」
あおい「うーんどうしようかな?」
 
A:行く←
B:行かない
 
あおい「うん。行ってみようかな」
みずき「よし! それじゃあ、明日オレの学校で待ち合わせな」
あおい「え? どうして晶の学校に?」
みずき「ああ。明日、オレの学校で学校祭があるんだよ。握手会までまだ時間があるからそれまで学校祭をたのしもーぜ」
あおい「う、うん」
あおい(そっか……みずきは学校行っているんだったか。みずきってパープルガールの中で一番忙しいから両立は大変だろうな……)
 
 
次の日、握手会当日、晶の学校にて
 人通りの多い学校。
 変装したあおいはあせりながら前に進む。
あおい(ばれてないよね……第一ボクはばれるほどまだ人気ないし……)
 向こうから変身前のみずきである晶が走ってくる。
 晶 「おーい! あおいーー!」
あおい「わわっ。晶ってばそんな大きな声で名前を呼ばなくても」
 晶 「わりぃわりぃ」
あおい「もうっ、ばれて困るのは晶も一緒でしょ」
 晶 「じゃあ……あお。でいいか?」
あおい「うん、それならいいよ」
 
 あおいは機嫌を直すが、晶は改めて手を合わせてごめんのポーズをとる。
 
 晶 「それから、ごめん。」
あおい「ん?」
 晶 「今日、色々案内するつもりだったけどさ、クラスの奴らに捕まっちゃってさ。クラスの出し物に手伝わなきゃいけなくなったんだよ」
あおい「え?」
 晶 「全く……あいつときたら、案内しなきゃいけない人がいるって言うのに、『あんたはただでさえ学校をサボりがちなんだから手伝わなきゃだめ』なんて言ってくるんだから」
あおい「そう……」
 晶 「だからさ。悪いけどちょっと一人で回っててくれるか? 迷うことはないと思うし、色々回るだけでも楽しめると思うぜ」
あおい(うーん。どうしようかな?)
 
A:一人で回る
B:晶を手伝う←
 
あおい「だったらボクも手伝うよ。晶のクラスの出し物」
 晶 「え! ホントか?」
 
 
 晶のクラスの出店のやきそば屋台。
 あおいは黙って焼きそばを作っている。
 晶 「へぇ、うまいもんだな。焼きそば作るの」
あおい「うん、家じゃ妹とボクで交互に作ってるし、それに中華料理屋でアルバイトしているんだから、焼きそばくらい作れるよ」
 晶 「中華料理屋でバイトかぁ。何か似合っているような気がするなぁ」
あおい「あははは……」
 
 晶は、クラスメイトたちと話す。
男子A「おい、晶。誰だ? あの女の子?」
 晶 「あっ! ああ……し、親戚の子だよ。今日遊びに来たんだ」
男子B「うーん。でもあの子どっかで見たことないか?」
晶・あおい「ギク!」
 晶 「ど、どっかって、ど、どこだよ」
男子B「ごくごく身近で見たような……」
男子A「ああ、オレもそんな気がする」
 晶 「そ、そんなことないって。あの子はこの町に来るのも初めてだし」
男子A「そうかぁ?」
男子B「うーん」
 晶 「ほ、ほら。そんなこと考えていないで早く作業しないと智恵子にまた怒鳴られるぞ」
 男子A、Bは頭を悩ませながら持ち場に戻る。
あおい(あ、危なっかしいなぁ……)
 
 
 やがて時間も過ぎて握手会の時間が近づいてくる。
 あおいと晶の2人は外に出るため、廊下へと出る。
 すると一人の女子生徒が晶を呼び止める。
智恵子「晶! あんたまたサボる気!?」
 晶 「げっ! 智恵子!」
あおい「誰?」
 晶 「赤沢智恵子。オレのクラスメイトでむかつく女」
智恵子「聞こえてるわよ! 誰がむかつく女よ!」
あおい「あはは……」
 晶 「それはそうとそこどいてくれるか? オレたち急いでいるんだけど」
智恵子「はぁ〜〜。晶。あんたまたサボる気でしょ」
 晶 「だから、今日は用事があるって前々からいっていただろ」
智恵子「用事ねぇ……。ねぇ晶、あたし知っているのよ。晶が今日どこに行くのか」
あおい「え!」
 晶 「な、何言っているんだよ!」
智恵子「今日は白川みずきの握手会だもんねぇ」
あおい「えぇ〜〜!」(もしかして、ばれているの?)
 晶 「(落ち着けあおい。そういう意味じゃないって)」
あおい「(だってだって)」
 
 小声で話す2人をよそに智恵子はあきれたように声を出す。
 
智恵子「あんたねぇ……いくらファンだからって、アイドルの追っかけもほどほどにしておきなさいよ」
 晶 「う……」
あおい「え? ファン? 追っかけ?」
智恵子「近くでパープルガールのイベントがあるたびに学校サボってまで追っかけちゃ、後で困るわよ」
 晶 「う……」
あおい「(ほっ、なあんだ……そう思われていただけか)」
智恵子「アイドルなんて可愛がられていい気になっている子ばっかりなんだから、あんたもそんな子の追っかけなんてやってたらバカになるわよ」
 晶 「おまえなぁ……」
智恵子「アイドルのファンなんてバカばっかり。そのうち何かアイドルがスキャンダルでも起こしたら『裏切られた〜』って言うことになるんだから。だったら最初からファンなんてしなければいいのに」
 晶 「お、おまえなぁ」
智恵子「まぁ、今日は見逃してあげる。私も後でちょっとだけ用事があるからね。さぁ、行っていいわよ」
 
 智恵子は去っていき、取り残される晶とあおい
 
 晶 「あいつ、言いたい事いいやがって……」
あおい「あ……はは…」
 晶 「気にするなよ。あおい」
あおい「気にしてないって。それより時間」
 晶 「ああっ! 急がないと!」
 
 
 握手会の会場まで着き、急いで着替え終わる。
 そして、会場まで行き握手を始める。
 8人目のメンバーあおいも参加すると知らされたファンは逆に喜び並ぶ。
 
 ぎゅっぎゅっ
  ぎゅっぎゅっ
 
 2人は握手をして列を捌いていく。
あおい(へぇ……握手会ってこんな感じなのか)
みずき(な、さほど難しくないだろ)
あおい(そうかなぁ)
みずき(そうだって。注意しなきゃいけないことは始終笑顔でいることぐらいだし」
あおい(それが難しいようなきがするよ。だって終わりまで何時間もあるんだし)
みずき(すぐなれるって)
 
 半ばまで来たときみずきが小声で話しかける。
 
みずき(でも、万が一変な人が来たときに気をつけろよ)
あおい(変な人って?)
みずき(オレはまだあったことがないけど時々いるらしいんだ。わざわざ罵倒してきたり、悪口言ってきたりする奴が)
あおい(うわ……)
みずき(万が一そんな奴に会っても中止するわけに行かないからな。もし、精神的ダメージを受けたとしても、そんなの表に出さずに続けないと)
あおい(大変だなぁ)
 
 握手会も終盤。あと数人というところである。
 
あおい(ふぅ、何事もなく終わりそうだなぁ)
みずき(握手会なんてこんなもんだって)
 
 そこに一人の少女が走ってくる。
 その少女は息を切らせながら、まだ握手会が続いていることに安心したようだった。
 あおいはその少女を見て疑問を感じる。
 
あおい(あれ、あの子? ごく最近、どこかで見たような?)
みずき(どうしたんだ? あおい?)
あおい(うん? あの子だけどどこかで見たような気がするんだ……どこだろ?)
みずき(ん? どれどれ?)
 
 みずきは目を凝らしてその少女を見る。
 そして、驚愕した表情を浮かべた・
 
みずき(げっ!! 智恵子! 何でこんなところに!?)
あおい(智恵子さんって? みずきのクラスメイトの? 確かアイドル嫌いなんだよね。何でこんなところに?)
みずき(わ、わからん。だけどもしかしたら……)
あおい(もしかしたら?)
みずき(わざわざ罵倒するためだけにここに来たんじゃ……)
あおい(ま、まさか)
みずき(いや、わかんないぞ。とにかく、あおい。平常心だ。あいつに何言われても精神的ダメージなんて受けるなよ)
あおい(う……うん、わかったよ)
 
 智恵子の番が来て手を握るみずきと智恵子。
 
みずき「よ、ようこそ。来てくれてありがとう」
あおい(笑顔が引きつっているよ、みずき)
智恵子「わ、わ、本当のみずきだ。本当に間に合ってよかった」
みずき「そ、そういえば、ずいぶん急いで来たみたいね」
智恵子「今日、学校祭があったからぎりぎりできたの。ごめんなさい」
みずき「べ、別に気にしないでいいわよ。来てくれただけでもうれしいわ」
智恵子「それから早く着すぎちゃうとクラスメイトと会っちゃいそうだし」
みずき「え?」
智恵子「う、うん。なんでもない」
 
 握手しながら、2人は話す。
 みずきは引きつった笑顔のまま、智恵子は満面の笑みを浮かべて。
 
みずき「あ、あはは、パープルガールを応援してくれている?」
智恵子「うん! すっごく応援しているわ! CDも全部買ってるし、出演しているドラマも全部録画しているし、あ、コンサートにも行ったことあるんだから、チケット代が高すぎるから1回しかいったことないけど……」
みずき「そ、それでも応援してくれてありがと。す、すごくうれしいわ」
あおい「……」
みずき「じゃ、じゃあさ、ぱ、パープルガールのどんなところが好きなのかな?」
智恵子「う〜ん、やっぱり一番の理由はみずきちゃんかな?」
みずき「え?」
智恵子「何かみずきって他のアイドルにない魅力があるのよ。トップアイドルなのに何故かすごく身近に感じるって言うか……。見た目だけじゃない可愛さがあるって言うか」
みずき「は、はは……すごくありがとう」
智恵子「それじゃあ、これからもがんばってね。応援しているから」
 
 握手会終わる。
 握手会の控え室にいるみずきとあおい。
 何故かみずきは落ち込んでいた。
 
あおい「え、えーと」
みずき「し、知らんかった……あいつ隠れファンだったのか……」
あおい「えーと、どうしてみずきは誉められたのに精神ダメージを受けているのかな?」
みずき「誉められた、か……罵倒されたほうが気が楽って気がしてきた」
あおい「(あはは……説明はできないけどよくわかる気がするよ)」
みずき「はぁ……」
 
(晶の心って複雑だなぁ)