少女少年SS(ミノリルート)一部ダイジェスト(1/2)

 アイドルの仕事が終わり、女装から着替え終わり、控え室でジュースを飲んでいるあおい。
 そこに着替え終わった稔がコーヒーを持ってやってくる。
 
稔「おつかれー。あおい」
あおい「おつかれ。ミノリ……じゃなくて……稔」
稔「そうだ、あおい。何か食べて帰らないか?」
あおい「あ……ごめん、稔。ボク、今日は早く帰らないと……」
稔「え? 何かあるのか?」
あおい「今日は妹が豪華な食事作るって張り切っててさ。もし、何か食べて帰ったらすっごく怒られちゃうよ」
稔「そういえば、あおいは妹と2人暮らしだったけ?」
あおい「うん。ボクの家は、両親がいないからずっと妹と暮らしているんだ」
稔「ふ〜ん。羨ましいな。兄弟って」
 
 稔の顔に影がよぎる。
 
あおい「え? でも、稔にも兄弟がいなかったけ?」
稔「うん。オレにも兄貴がいるよ。でも、兄貴は札幌の方で暮らしているからさ……」
あおい「あ、そうか……」
稔「だからさ……オレ、家族でご飯食べるってこと、最近ずっとやってなくて」
あおい「う……で、でも、稔のご両親は東京にいるんだよね……なら3人で……」
稔「無理だって。父さんと母さんは別居してるし」
あおい「う……」
稔「どっちの家に行っても、真夜中に帰ってくるから、一緒に食べれやしないんだけどね」
あおい「う……ごめん。ボク、変な事言っちゃって」
稔「あ……はははっ、気にしてないって。ほ、ほら、早く帰ろうぜ」
  
 
その日の夜、あおいの家
 もぐもぐ
  もぐもぐ
 豪華な夕食を食べるあおいとその妹の空。
 あおいは満足そうに夕食を食べ、空はあおいを気にしながら食べている。
 そんな中、空が口を開く。
 
空「あおいちゃん。ど、どうかな。このご飯? いつもより時間と材料とかこだわったんだけど」
あおい「うん、すごく美味しいよ」
空「ホント? 味付けとかちょっと雑だった気がするんだけど……」
あおい「ホントだって。本当に美味しいって」
空「でも、やっぱりあたしってあおいちゃんに比べるとまだまだだな……」
あおい「あ、それから、空、ごめん」
空「え? 何が」
あおい「ボク、最近の食事当番、空にまかせっきりだったよね」
空「そんなこと気にしなくていいって。あおいちゃんには仕事があるんだし」
あおい「でも、空にも学校があるんだし」
空「もう、学生は、アイドルに比べると全然楽なんだから。大丈夫だって」
あおい「う〜ん……。あ! それじゃ明日は休みだから、料理とか掃除とか全部、ボクがやるよ」
空「え? いいの?」
あおい「いいって、ボクもたまに家のことをしてみたいし」
空「そう。それならやってもらおうかな?」
あおい「うん。ボクに任せておいて」
 
 食事も終わり、後片付けをする空。
 鼻歌を歌いながら皿を洗う。
 そこにあおいがやってくる。
 
あおい「そら。ボクも皿洗い手伝うよ」
空「あおいちゃん。別に今日はあたしの当番だからいいのに」
あおい「いいの。ボクも皿を洗いたいの」
空「変なあおいちゃん」
 
 皿を洗う、あおいと空の兄妹。
 あおいは手を動かしながら、空の顔をじっと見る。
 
あおい(やっぱり、空といると落ち着くな)
 
 あおいは、ふと、先ほど稔と会話したことを思い出す。
 家に帰っても一人っきりで一緒にご飯も食べる家族もいない稔。
 もし、自分が稔と同じ立場になっていたらどうだっただろうか?
 しかし、それを考えようとしても思いつかない。
 空のいない生活なんて考えられないのだから。
 
空「どうしたの? あおいちゃん?」
あおい「え?」
空「さっきからニコニコ笑ったり、突然悲しそうな顔をしたり」
あおい「なんでもないよ……ただ」
空「ただ?」
あおい「ただ……空がずっとボクのそばにいてくれてよかったなって思って」
  
 その言葉を聞いて空は真っ赤な顔になってまくし立てた。
  
空「な、な、な、な、何、いってんのよ!!」
あおい「何って?」
空「と、突然、へ、変なこと言い出して!」
あおい「へん……かな?」
空「ま、全く、あおいちゃんってば疲れてんのね!」
あおい「え〜と〜」
空「そ、それじゃ、皿はもう洗い終わったから! 疲れているなら早く寝なさい!」
 
 怒ったようにして去っていく空。
 きょとんとして、後姿を見つめるあおい。
「え〜と〜。ボク、何かまずいこと言ったかな?」
 
 しばらくして、居間でテレビを見ているあおいと空。
 
ピンポ〜ン
 そこにチャイムの音。
 立ち上がる空とあおい。
 
あおい「あ、いいよ。ボクが出てくるから」
空「む。じゃ、じゃあ早く行ってきてよ」
あおい(う〜ん、まだ機嫌が直ってないのかな?)
 
 玄関に出てドアを開けるとそこには。
 
あおい「み、稔?」
 
 そこには、同じアイドルグループの稔がそこにいた。
 まるで泥棒が持っていそうな風呂敷に包んだ荷物をしょって。
 
あおい「どうしたの? 稔? 何でここに?」
稔「あおい! お願いがある! 今日、オレをあおいの家に泊めてくれ」
あおい「え?」
 
 
 〜つづく〜