ヤブサメ町、町外れ、休日、夕方(回想)

あの後、公園で近くの子供と混ざって、ボール遊びしていた。
そう、こうしている内に空は赤く染まり、別れの時間がやってくる。
雪火と允は、公園を出て、別々の方向に変える場所まで来ていた。

「それじゃ、雪火またな♪」
允は雪火に向けて手を振る。
「ああ、また、学校でな」
雪火もそれに答え、手を振る。
その2人の姿は、まるで恋人のよう…
允は背を向け、去っていく。

…今日一日、允という友達がどんな人物か少し分かった気がした。
允の後姿も少女そのもの。
雪火は、先ほど公園で子供に言われた一言を思い出した。

――ねぇ、お兄ちゃんって、あのお姉ちゃんのこと好きなの?

あの時、允は笑いながら誤魔化していたけど、雪火は……
允の姿が少しずつ離れていく。
(オレはどうなんだろうか?)

そう思ったとき、声を出していた。
「允!!」
その声に振り返る允。不思議そうな顔をしている。

(ヤ、ヤバッ)
声を出した雪火にとっても、とっさの出来事だった。
正直、何を言っていいのかわからない。
「どうしたんだ?雪火」
雪火が慌てている所に允が声に出して言う。
(…やばい何か、答えなければ…)
そして、雪火は口にした。

「また今度遊びに行こうぜ…」

すると、允はニッコリ笑い答えた。
「ああ…」
再び背を向け去っていく。

…オレは…オレが言いたかったことは本当にそれだけなのか?
…他に何か言うことがあったんじゃないのか?

允の姿が見えなくなった後も雪火のモヤモヤは取れなかった。