間宮 卓司

 『終ノ空』にて強力なインパクトを残した教祖様。
 プレイしてから約10年経った今でも『終ノ空』が私の記憶に鮮明に残っているのは彼のおかげでしょう。
 実際にプレイするまで『終ノ空』とどれだけ関連があるのか分からないままプレイ。
 序章にて顔見せ程度だった彼ですが、1章にて『終ノ空』同様に覚醒。
 プールで由岐に世界の真理を語り、教師を花瓶で殴りつけての演説。
「聞くがよい! 恐怖におののくものどもよ! 全ての生は20日で終わる! これはまぎれもない真実だ!」
「私を生まれ変わらせるために神があの二人を贄とした! 私は生まれ変わった! 何に? そう救世主にだ!」
「世界はあと五日で終わる! しかし、それは兆しだ! 世界が生まれ変わるための……」
「……皆知っているだろう。世界が嘘で満ちている事を! そして真実は隠されている事を!」
 10年越しの声付きでの名シーンの再現には感涙しました。
 CVは佐山森さんという方で、他に演じた役など一切分かりませんが、間宮様のイメージを変えることなく様々な方面で演じきりました。
 一体、佐山森さんって誰なんだろう?
 
 
歴史は必ず繰り返す。
最初は悲劇として。
そして次は、喜劇として。
 
 これは間宮様視点の物語である2章の序文。
 ここでいう「最初」というのは、このゲームの1章なのかそれとも『終ノ空』なのか分かりませんが、ホラー要素が多かった『終ノ空』に比べ喜劇チックに書かれています。
 そして、物語の完成度を高めるため、『終ノ空』でのほとんどの不可思議現象に説明付けがされているこのゲーム。
 そういった要素を受けてか『終ノ空』の時にあった人智を超えた洗脳術や、機械的な無情さは失われています。
 往来の間宮様ファンの中には、それを不満に感じた人もいたようです。
 私も往来の間宮様ファンですが、これを間宮様の新たな魅力と受け止めました。
 
 間宮様絡みで私にとって一番不満だったのが、せっかくの間宮様の女装が覚醒前の苛められシーンとしてしか使われてない。
 女装して女の子とHする妄想を以前からしていたなら、希実香相手に実現しても良かったのに…。
 
 側近にした希実香が今回の間宮様を大きく変えています。
 椅子に気遣ったり、お姫様抱っこで下僕を運んだり、『終ノ空』の時の間宮様では到底考えられないような事を。
 何だか、希実香のハチャメチャっぷりを呆れた目で見ている間宮様はとても幸せそうです。
 希実香から全て打ち明けられた後、空へ還ろうとする希実香を、救世主である事を捨ててまで追うシーンは非常に良い。
 
彼女は言った。
償いだと。
彼女は言った。
十分だと。
彼女は言った。
それが、私の世界の価値であったと。
ボクは思う。
そんなの糞喰らえだと。
世界がなんだ。
償いがなんだ。
高島がなんだ。
呪いがなんだ。
死がなんだ。
ボクは彼女を抱きしめたい。
ただ抱きしめたい。
これ以上生きなくても良い。
誰も生きなくて良い。
世界も、
ボクも、
希実香も、
何も残らなくて良い。
全て消えて良い。
ただボクは、
ただボクは彼女を、
抱きしめたかった。
死の直前だろうが、
それが、瞬時の世界のことであろうが、
ボクは彼女の生きたぬくもりを感じたかった。
だからボクは飛んだ。